不登校の主な8つの原因とその対応方法
基礎知識
小学生から高校生、更には大学生まで、近年増加している不登校ですが、不登校に至る理由はさまざまです。
ここでは、文部科学省の統計データや不登校の体験談から、不登校になる主な原因や特徴を紹介。それぞれの対応方法を説明していきます。
参照元データ:平成24年度の「
学校生活によるトラブル(いじめ、集団生活が苦手、教師と合わないなど)
社会問題にもなっている”いじめ”ですが、実際にはいじめが原因で不登校になる児童は0.5~2%程度とされており、友人間のトラブル(8~15%)といった出来事のほうが、不登校の原因となりやすいというデータが出ています。しかし、学校側でいじめと認定されていないだけで、実際当事者である子どもは「いじめられた」と思っている場合もあるので、実際は2%よりも多い数の生徒が、いじめにより不登校になっている可能性があります。
不登校の傾向が出てきたからといってむやみに心配するよりも、子どもの話をゆっくりと聞き、合わない人もいれば合う人もいる、自分が疲れない適度な距離で接しても大丈夫といった言葉で、子どもの心にある負荷を取り除いてあげることが大切です。特にいじめだった場合、それを両親に話すことも非常に勇気がいることですから、優しく受け止めて欲しいと思います。
その上で、特別教室や保健室登校といったところから復学を目指す、別の学校に転校して環境を変えるという選択を考えていくと良いでしょう。
無気力
不登校の原因で最も多いのがこの無気力です。小中学生では25.9%、高校生では30.1%もの児童が不登校の理由に無気力をあげています。
受験で燃え尽きてしまった、学校での生活が理想と違った、期待に応えようと頑張りすぎて疲れてしまったなど、子どもによって理由はさまざまです。
無気力になっているところに、「学校へ行け!」「勉強しろ!」と言ったり、無理やり保健室登校などをさせたりしても復学に至ることは難しいでしょう。まずは本人を休ませ、無気力から前に進みたい気持ちを取り戻してもらうことが先決です。
ただし、ただ家にいて昼過ぎに起きて朝方に眠りネットやマンガ漬けになってしまうと、更に無気力が加速してしまいますので、生活リズムを家族に合わせる、おつかいやお出かけに付き合わせるといったように、メリハリのある生活と外の世界との接触は継続するようにしましょう。
非行や遊び
非行や遊びといった理由も不登校の原因の9~13%を占めており、決して少ない割合ではありません。こちらも、原因はひとつではありませんが、家庭での問題が影響していることが多いようです。
・家庭内の不和から居場所を無くし、悪い友人と一緒にいるようになった
・勉強やスポーツなど、自分自身ではなく成果しか褒められないのが嫌になった
・友人関係、勉強、将来についてなどに対し、親の干渉が厳しすぎたため
・親が自分に無関心であると感じ、意識を向けさせたい
このように問題行動は、”理想の子ども”でいることへの反発であることが多いのです。
親の都合の”いい子”であることや、頭の”いい子”でいることを評価するのではなく、健康で元気に過ごせているだけで十分だと伝えたり、思いやりを見せてくれた時には感謝を伝える、といったことで、子ども自身を認め、愛情を示すことが大切です。
学業不振
学業不振も、不登校の原因のうち8~9%を占めています。
思ったように成績が伸びない、勉強が難しくてついていけないといった理由から、授業や試験が辛くなり学校に行かなくなるのです。
対策としては、やはり学力を上げることが必要となってきます。
小学生であれば、家庭で親が教師代わりを務めてあげることが有効でしょう。子どもの興味があることや、好きな教科を中心に勉強を進めてみましょう。ただし、「なんでこんな問題もわからないんだ」といったように子どもを責めてしまうと、更に勉強嫌いを助長させてしまいます。
中学生や高校生でのつまづきは、分からなくなった部分から勉強することが大切です。個別指導の塾や家庭教師を利用して、しっかりと学び直しましょう。
このように学力のサポートを行うことで復学に備えた環境を作ることが大切です。
甘えたがり・精神が未熟
小学生の児童に多いのが、親と離れることによる不安や自立心が育っていないという理由です。
内面が未熟であるため、運動や試験などの苦手なことがあると学校を休みたがったり、生活習慣が身につかない傾向があります。
また、落ち込んでいるように見えても、学校へ行くと楽しそうに過ごしているため親は安心するのですが、またすぐに学校へ行かなくなるということを繰り返します。
このようなタイプは、急に改善することが難しいため、先生や家族、専門機関の継続的なサポートを通して、子どもの内面が成長していくことを長期的に見守っていくことが大切です。
家庭環境(金銭的問題、介護、家庭内不和など)
両親の離婚や、リストラによる生活の困窮といった家庭環境の変化をきっかけに不登校となる子どもも3~5%程度存在します。
しかし、実際はその事実が辛くて…というよりは、離婚やリストラといったストレスで親自身が余裕のない生活となってしまうことから、子ども自身もストレスを感じ、学校や家族と関わることを避けるようになる場合も多いのです。
ここで夜遊びなどの非行に走る子どももいれば、自室にこもって出てこないというように、子どもが見せる反応はさまざま。
親も、子どもに心配をかけないようにと必死になりますが、それは子どもにも伝わっています。また、親自身のストレスが大きい場合、自分はこんなに子どものために頑張っているのに、なぜ子どもは自分を困らせるようなことをするのか? と無意識に子どもを責めてしまいがちです。
しかし、子どもも苦しい気持ちを親に打ち明けられず、心配をかけたくないため、お互いにすれ違いが生まれてしまいます。
子どもには楽しんだり、勉強をしていいことを伝え、辛い気持ちをお互いに話し合うことが親子の溝を埋めてくれるかもしれません。
発達障害
教科によって極端に学習の遅れが見られる、同じ年齢の子ども達と遊ばない、文章の理解に普通よりもあきらかに時間がかかるなどの特徴がみられます。
知的能力には問題がなくても、「聞く」「話す」「読む」「書く」が出来ない場合(LD:学習障害)や、静かにしなければならない場面でどうしても出来ないといった注意欠陥多動症(ADHD)も、発達障害の一部です。
こういった子どもには、専門的な知識をもったカウンセラーや、担任の教師と一緒に継続的なサポートを行っていく必要があります。個別指導を取り入れながら、子どもにとって最も良い学習環境を整えてあげることが大切です。
神経症
強いこだわりがある、理由もなく不安になる、気分的な落ち込み、対人恐怖症になるなど、ストレスによって何らかの精神的負担や行動ができなくなるなどの症状を、神経症といいます。
神経症と思われる、不安などの情緒的混乱を不登校の原因とする児童は16~26%程度おり、高い割合を占めています。
他の原因から二次的に派生することも多いのですが、中には精神疾患の初期症状としてこの神経症が出ている場合もありますので、上記した傾向が強いようであれば、まずは医者などの専門機関に相談してみることも大切です。
まとめ
ここまで、不登校になる原因を紹介してきました。
しかし、当然、原因はここで紹介したものだけではないでしょう。また、複数の要因が重なって不登校という状況に至ってしまった可能性もあります。
不登校になった本人であっても、現時点で不登校になった原因を把握していないという場合も少なくありません。
もし原因がどんなものであったとしても、学校へ無理やり行かせたり、学力の心配だけを重要視することは良い結果に繋がりません。
そのため、「色々な原因があるかもしれないけれど、今不登校になっている本人にとって何がいいのか」ということを一番に考えて、学校やフリースクールといった機関と一緒に、本人を支援していく方向に向かって欲しいと思います。
このコラムの著者
不登校サポートナビ 編集部
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