フツウになりたい。『学校へ行けない僕と9人の先生』が描く不登校当時の気持ち
特集
2016年11月18日
『学校へ行けない僕と9人の先生』は、小学校・中学校時代に不登校を経験した、作者でもある棚橋正一さんの実体験が基になったフィクション作品です。ウェブコミック掲載サイト『Webコミックアクション』で2014年1月~同年11月まで連載され、2015年2月に単行本(全1巻)が発売されました。
出会った先生とのエピソードを中心に、主人公が葛藤しながら、両親や友達との関係を通して成長していく様子が描かれているこの作品。タイトルにある「9人の先生」のうち9番目の先生が、『ドラゴンボール』をはじめ、多数の人気漫画の著者である鳥山明氏ということでも注目を集めています。
あらすじ
小学校1年生の時、担任教師から体罰を受けたことがきっかけとなり、不登校になった主人公・棚橋正知。毎日同じ悪夢を見るようになり、登校しようとすると発症する激しい頭痛に苦しめられながら、学校へ行ったり行けなかったりの日々を送ります。
そんな中、主人公の心の支えとなっていたのが『ドラゴンボール』のキャラクターの絵を描く事。そして、ひょんなことから鳥山明氏本人に会えるチャンスがめぐってきたのです。
「特別扱いされる棚橋くん」から「フツウの棚橋くん」になりたい!
みんなは「フツウ」に学校に行って、「フツウ」に周りに馴染めるのに、それがしたくてもできない自分。主人公はどうしたらみんなと同じ「フツウ」になれるのか悩みます。
次々と遊びを考えて周りの気を引いてみたり、弱いものを見つけてはみんなと攻撃してみたり…。違和感を覚えつつも、それで「フツウ」のみんなと同じになれている気がした主人公でしたが、それも長くは続きません。中学校の進学では、勉強に励み地元から離れた中学に入学しますが、結局うまく馴染むことはできませんでした。
「幼いころの自分には、大多数の皆がやっていることが『フツウ』でした。そして、幼い故に思考の幅が狭いため、それができることが人としての合格ラインだと思い込んでいたんです」
(引用元 : 不登校と漫画と鳥山明――漫画を描き続けて自分と世界が変わるまで/http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1402/21/news031.html)
作者の棚園正一氏は当時の事をこう振り返っています。
親や先生たちの行動で、主人公は何を思うのか
親や先生たちは、色々な方法で主人公が学校へ通えるようにアプローチをします。主人公自身もその期待に応えたい思いと「フツウ」の子になりたい一心で頑張るのですがうまく行きません。
ある時は、親が学校に行かせようと頑張れば頑張るほど、身動きが取れなくなりました。またある時は、先生のおかげで楽しい学校生活を送っていたのに、違う先生が休みを責めることで、また学校へ行けなくなってしまいました。
作中では、色々な出来事が起きる中で、不登校となった本人がどんなことを考え感じているのかが丁寧に描かれています。主人公の気持ちの変化やできない自分への葛藤が、読者に強く響いてきます。
まとめ
多くの人が、「フツウ」とは何かを考えたことがあると思います。
団体で行動することの多い学校生活。大多数の人が出来ることが出来ない子どもはどうしても目立ってしまうため、本人や親をはじめとする周りの人も辛い思いをするかもしれません。
近年、フリースクールや通信制の学校などのように、いわゆる「フツウ」に登校する以外の選択肢も増えてきていますが、まだ認知や理解が十分に広まっているとはいえません。子どもにとって、ありのままの自分を「フツウ」として受け入れてくれる環境の必要性を、考えるきっかけになるのではないでしょうか。
作品情報
『学校へ行けない僕と9人の先生』
(棚園正一/双葉社)全1巻(完結)
詳細サイトを見る ※別サイトへ移動
【2016年11月現在】
棚橋正一さんは「学校へ行けない僕のキモチ」を不登校新聞で連載中です。
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このコラムの著者
不登校サポートナビ 編集部
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