【映画レビュー】不登校をゼロに。『みんなの学校』から見える居場所のあり方とは
特集
2015年06月19日
(C)関西テレビ放送
“自分の居場所”とはどんな場所でしょう。
集団行動が求められる中で、自分の居場所がどこにあるのかわからない、学校には自分の居場所は無い、と悩み、反発してやっかいがられたり、不登校になる子どもが増えていると言われています。
そんな現代で、不登校ゼロを実現している小学校があります。
その学校とは一体どんな学校なのでしょうか?
(C)関西テレビ放送
平成25年度(第68回)文化庁芸術祭大賞も受賞しているこの映画は、大阪市にある大空小学校という公立小学校を、1年間という長期にわたり追い続けた教育ドキュメントです。
生徒一人ひとりに向き合う先生の姿や葛藤、生徒同士の関わりあい。更には学校だけではなく、地域や親が一体となっている「大空小学校」の取り組みが注目され、全国各地で映画が公開されています。
不登校、発達障害、やっかい者。誰でも入れる『みんなの学校』
全校生徒約220人のうち、特別な支援が必要な生徒は30人を超える(通常学級数6・特別支援学級7)。
それでも大空小学校では、全ての生徒がみんなと同じ教室で授業を受けます。
教室には、発達障害や知的障害だけではなく、前の学校で不登校になった生徒、暴力やケンカなどでトラブルを起こしてしまった生徒など、様々な事情を持った生徒がやってきます。
大空小学校でのルールはたったひとつ。
“自分がされて嫌なことは人にしない 言わない”ということ。
この約束を破った生徒は、”やり直し”を行うため校長先生の部屋へやってくるのです。
じっとしていられず、教室を飛び出してしまう生徒。
「あの子が行くのなら、大空小はやめとこう」という噂が立てられる生徒。
友達に暴力を振るってしまう生徒。
大空小学校で、生徒たちはどんな風に学び、そして成長していくのでしょうか…。
ルール破りは、他人と自分の気持ちに気づくきっかけ
生徒が”自分がされて嫌なことは人にしない 言わない”というルールを破った後、「やり直し」という機会によって少しずつ成長し、変わっていく姿に心が打たれます。
(C)関西テレビ放送
ケンカや暴力など、自分を抑えることが出来なかった生徒が、迷惑をかけてしまった人に謝罪し、心配してくれた人にお礼を言う。
自分のダメな部分だから直したい、直すと宣言する。
また少し成長した、その力強い表情がとても頼しいのです。
もちろん、時には悪気なく行ったことが、相手にとっては辛い思いをさせることもあります。
そんな時は、なぜいけなかったのか、どうしたら相手は辛い思いをせずに済むのかを先生が説明します。
印象的なのは、小学校1年生から3年生まで不登校となっていた生徒が、大空小学校に徐々に慣れてきていたころ、昼休みに学校を脱走してしまう場面。
脱走の理由は「昼休みにみんなで遊ぶのが嫌だったけれど、みんなが連れて行こうとしたから」でした。
そこで先生はクラスのみんなに伝えます。
「この子は3年間ずっと家で過ごしてたから、突然みんなと同じように遊ぶのは難しい。でも、遊びたくないわけじゃないんだよ。」
自分の気持ちを上手く伝えられない生徒と、良かれと思った行為が拒否されたみんなの気持ちを、見事につなげるその言葉に、こんな先生がたくさんいたらいいのに!と感じるのは、私だけではないと思います。
唯一のルールの基準である”自分がされて嫌なこと”。
その場限りの気持ちではなく、置かれている状況や過去の体験にまで踏み込んだ想像をすることが大切だと気づかせてくれます。
これは、大人の私達にも大切な考え方ではないでしょうか。
『みんなの学校』とは「自分が作る学校」だった
「大空小学校は誰が作りますか」
「自分です」
「自分って誰ですか?自分だという人、手をあげてください」
と、校長の木村先生が言うと、生徒たちの手がわーっと上がる。
そんなシーンから始まるこの映画からは、大空小学校が一貫して、「自分」という存在を大切なものと考えているかということを感じます。
一人ひとりが能動的に学校のこと、友達のことを考えることで、生徒自身や学校に関わるそれぞれの人に”居場所”ができているのかもしれません。
(C)関西テレビ放送
正直、この映画を見たからといって、「大空小学校に転校する!」ということは今すぐできない人がほとんどでしょう。
しかし、映画の中には、子どもの心に寄り添ったり、どのように子どもに接したらいいのかというヒントがたくさん詰まっています。
なにより、一生懸命に成長する子どもたちがとても愛おしい!
あなたも、そんな「みんなの学校」を覗いてみませんか?
[予告動画]
映画情報
平成25年度(第68回)文化庁芸術祭大賞受賞
映画『みんなの学校』公式サイト (※別サイトへ移動します)
劇場情報 (※別サイトへ移動します)
自主上映会募集中 (※別サイトへ移動します)
このコラムの著者
きたざわあいこ
株式会社クリスク ライター
北海道出身。中学時代に約2年間いじめにあい不登校になりかける。高校では放送部に熱中し、その後大学へと進学。上京してはじめて、学校以外の居場所や立場の違う人と接し、コミュニケーションについて考えるように。現在は自分の経験を活かし、子供の悩みや進学に関する悩みについての記事を執筆。
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