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高校は何のために行くの? 意志がない人に高校進学を勧める理由

高校生

幼い時からインターネットで簡単に情報が手に入る環境で育った子どもたちは、恵まれているように思えます。ですが反対に、情報が自由に手に入ることで自分を見失い、生き方や進路に迷ってしまうことも多いのではないでしょうか。

ネットによるいじめ、犯罪の被害、非行などで傷つく場合もあるかもしれません。
それが不登校につながり、退学・引きこもりなどを引き起こすことも実際にあります。

そうならないためにも、自分を知り、周囲に惑わされないしっかりとした「意志を持つこと」が求められているように感じます。

それでは、その力をどう養っていけばよいのでしょうか?

実はあらゆる場面で「意志を持つこと」を学ぶ機会はあります。

例えば、読書で教養を深めたり、スポーツや音楽など多様な分野に触れてみたり、ボランティアやアルバイト経験など、本当にあらゆる場面がその機会だといえます。

ここでは視覚障害者の歩行を助ける盲導犬の仕事を参考に、福祉教育の観点から自分を知る手がかりを考えてみましょう。

支えてくれる周囲の人への感謝を忘れないように

自分を知るためには迷いながらでも"前に進んでみる"

盲導犬というのは、視覚障害者を目的地まで導いていると思われがちですが、それは間違いです。
なぜならば、盲導犬はあくまでも地図をイメージした視覚障害者の指示がなければ、目的地まで進むことができないからです。
ただし、視覚障害者は目が見えないことで道に迷ってしまったり、危険な状況に気付けず誤った判断をしてしまったりすることが時々あります。こうした場合の危険回避を、盲導犬が行ってくれるのです。

ただ指示通り動くロボットではなく、視覚障害者を尊重しつつ、大事なポイントで力を貸してくれているのが盲導犬です。お互いに信頼関係を育むためにも、盲導犬の教育(ルール作り)は絶対に欠かせないものなのです。
その本質からは、今の学校教育に求められていることを学び取れるはずです。

目が見えていても道に迷うことはあるのですから、目が見えなければ方向を見失って当然です。それが人生の進路ともなれば、誰だって迷うことはあるでしょう。そういった時に、人生における盲導犬のようなサポーターが必要になってくるのではないでしょうか。

進路を選択する際には、一度進んでみて引き返すことや、失敗もあるかもしれません。そんなときに自分を支えてくれる友達や教師、カウンセラー、医師、家族などの、共に人生を歩んでくれるサポーターに対して、素直に感謝できる気持ちを持っていけることが大切です。

高校生活は、社会にでる前の大切な訓練のとき

「何のために高校へ行くのか」ということを、じっくり考えたことはあるでしょうか。

人生において高校は、「自分で決めて、自分の力で歩んでいく」ことを訓練するための時間でもあります。義務教育ではないので、目的や単位修得の課題が問われるのも当然でしょう。

「学ぶ」とは権利です。
あなたの夢や希望を実現するため、今は何をしたいか分からなくても、自分の目標を見つけて進路を定めるため、など、高校生活はあなた自身のためにあるのです。

全日制の高校や、定時制や単位制、通信制、またフリースクールやサポート校、高卒認定の方法など、いくらでも道は開かれています。一度や二度つまずいたからといって、そこで全てが終わってしまうわけではありません。

社会に出ればルールの順守や成果が求められる場面は今よりも多くなります。ですが、高校はまだ”社会”ではありません
社会に出る準備をしながら、自分を試すことが許されている期間でもあるのですから、少しの失敗で自分の可能性を諦めてしまう必要は、どこにもないのですよ。

このコラムの著者

星野有史星野有史

1963年さいたま市生まれ。ベーチェット病により17歳で光を失う。1993年明治学院大学大学院博士後期課程単位取得。1989年よりアイメイト(盲 導犬)と歩行し、看護・福祉の専門学校、短期大学等で講義を担当、同時に福祉教育活動家として執筆・講演に勤める。現在、「ハーネス・ウィ研究所」の代表 講師として、人間力育成セミナー(通信制フリースクール)・福祉講演会等、幅広い分野で活躍中。著書に「夢をくれた盲導犬」ポプラ社「しっぽのはえたパー トナー」法研「盲導犬ミントの子守歌」ポプラ社「盲導犬キースのヒト観察記」相川書房「これからの福祉心理学」(共著)北大路書房他がある。