思春期の子どもと切り離せない非行と反抗
中学生
「中学校時代から非行に走った」という青年がいます。
現在、非行少年の更生支援に奔走しているその青年は、自分が”非行少年”だった頃の気持ちを語ることで、非行経験のない人たちには中々理解することが難しい、少年たちの気持ちを代弁しています。
「成績もスポーツも特に目立ったものがなかった自分が、悪いことをした時に、仲間が「すごい」と称賛してくれた。非行によって初めて称賛された事が、自分が非行の世界に足を踏み入れるきっかけになった」
という青年の話は、成長途上の子ども達にとって、”人から認められる経験は大きな変化をもたらすきっかけになる” ということを思い知らされます。
高校進学で見える自己評価と客観的評価のギャップ
中学2年生になると、親子ともども高校進学という壁が次第に迫ってきている、という感覚にとらわれるようになります。
この時期になると、親の期待に添えない自分や、自分自身の能力の限界というものを、子どもは自覚するようになっていきます。
更には、学習のつまずきは積み重なり、「何が分からないのか分からない」「こんな簡単なことも分からないと思われたくない」といった感情から、挽回するのは到底難しく思えてきます。
このような勉強への諦めの気持ちを持ちながらも、それでも親や教師に認められたい気持ちが相まって、子どもは非行に走っていくのだと言った専門家もいます。
高校進学率が97パーセントを超えている現代、「せめて高校くらいは」「入れる高校ならどこでもいいから進学してほしい」という親は思うでしょう。そしてその気持ちは、態度や言葉となって子どもに届きます。
しかし、親に認めてもらいたい、自分の葛藤を受け入れて欲しいと感じている子どもには、反抗のきっかけとなってしまう場合もあるのです。
親にも不登校や非行を受けとめてくれる環境が必要
当たり前に進んでいくだろうと思っていた”学校”というレール。
子どもがそこから外れてしまった時、また脱線したまま暴走を始めてしまった時、親も教師も、それはあってはならないものとして必死で止めようとします。
「非行はいけないこと」という考えが浸透している世の中で、非行に走った子どもを抱えた家族は、”親として失格”だと悩まされることでしょう。更には、親としての毅然とした態度を周りから要求されることで、親子関係の緊張はますます強いものなっていきます。
ですが、子ども本人も非行や反抗が良いことだとは思っていません。
親が、周りからのプレッシャーにしたがって、子どもを抑圧すればするほど、子どもは反抗を強めたり家庭から離れていく可能性があります。
しかし、不登校も非行も一朝一夕にそれを止める特効薬のようなものはないため、「あの子なら大丈夫!」と、子どもを信じて待つには、親自身が悩みを抱えすぎず、孤立しないようにすることも、とても大切なことです。
「親の会」と呼ばれる当事者の会などには、かつて同じ子育ての悩みを抱えた先輩たちや、自らが不登校や非行を体験した当事者たちもいます。このような当事者の会に足を運んで、人の話に耳を傾けてみる。他では話せなかった話を少しずつ話してみる…。
そういった体験が親子の絆の結び直しにも繋がっていくかもしれません。
このコラムの著者
堀江ミク
大学では教育学部において、中学校高等学校の美術教員免許を取得。子育ての悩みを抱える「非行」と向き合う親たちの会とつながり2006年「非行」と向き 合う親たちの会を設立。現在小学生向けの学習塾を開設するとともに、産業カウンセラー協会の養成講座で指導者としてカウンセリングの指導に当たる。
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