「ひきこもりUX会議」に参加してきた! 経験者による実用的な支援とは?
特集
2014年12月26日
2014年11月30日、東京・青山にある東京ウィメンズプラザにて、『ひきこもりUX会議』というイベントが行われました。不登校サポートナビも参加してきたので、当日のレポートや感じたことを紹介していきます。
このイベントは、
「実際にひきこもりの支援をしている人や、自分自身がひきこもりや不登校を体験したという人が、自分が利用した支援やサービス、経験を元に、ひきこもり生活に関する実用的な解決策や改善策を提案をする」という趣旨のものです。
当日は約300人が集まり補助席まで出る盛況ぶり。老若男女様々な方がいらしており、経験者の声を求める人の多さには驚きを隠せませんでした。
では、どんな提案がされたのか簡単にレポートしたいと思います。
8人のひきこもり経験者とその主張とは!
1人目 岡本 圭太さん/地域若者サポートステーション相談員
就職活動を機に挫折を経験し、25歳までひきこもりを経験。25歳の時に通院を始め、20代後半は当事者グループや勉強会の運営などに携わり、30歳で就職。現在は仕事の傍ら、講演活動のほかに、NPO法人リロードの月刊通信に連載している。
岡本さんの提案と理由
「助けて欲しい!」と思った時、意外かもしれないけれど医療も役に立つ。
ひきこもりからいきなり就職支援を受け働くというのはハードルが高いので、カウンセリングなどを受け、自分の気持ちや立ち位置を整理する時間が必要。
2人目 丸山 康彦さん/ヒューマンスタジオ代表・湘南ユースファクトリー代表理事
不登校のため7年かけて高校を卒業。大学卒業後、高校講師、ひきこもりを経て個人事務所を開設し、青少年支援の研修と活動ののち2001年に相談機関「ヒューマン・スタジオ」を設立。不登校・ひきこもり等への多様な援助を実践している。
丸山さんの提案と理由
ひきこもりで虫歯なのに病院に行けないのであれば、ひきこもりを理解してくれる歯医者を探し治療してもらう。
楽しくもないのにストレス発散でゲームを続けてしまうのであれば、同じレベルのゲーマーとおもいっきり対戦してゲームを楽しくさせる。
といったように、問題をひとつひとつ解決して、”ひきこもり生活の質を上げる”ことで、前向きになり次のステップへ足が向く。
3人目 勝山 実さん/ひきこもり名人・作家
高2の終わりから不登校開始。高3の2月に高校中退。以後20数年ひきこもりを続ける。自称ひきこもり名人。著書は「安心ひきこもりライフ」(太田出版)など。
勝山さんの提案と理由
和歌山の田舎にある廃校になった小学校で、ひきこもりスラムというものを作ります。
そこでゆっくりひきこもればいい。田舎は家賃も少ないし、畑も放棄されているのを無料で使えるから、お金がかからずゆっくりひきこもりが出来る。
4人目 小林 博和さん/ひきこもり不登校支援の会運営・ひきこもりドキュメント映画「home」上映委員会委員
長野在住。高校受験に失敗しひきこもりへ。そんな中、映画学校生の弟が卒業制作としてひきこもり中の自分を撮ったドキュメンタリー映画を作成しに実家へ。それがきっかけとなりひきこもりを卒業。
『home』というこの映画は、第1回世界学生映画祭で大賞を受賞し国内外で高い評価を得ている。現在では全国各地でひきこもり支援の活動も行う。
小林さんの提案と理由
ひきこもり当事者が入らない支援では、一度ひきこもりや不登校をやめられたとしてもまた戻ってしまう可能性が高い。まずは自分のような元当事者や当事者と話をしてみることが大切。人と出会うことで、自分の人生は変わっていく。
5人目 林 恭子さん/ヒッキーネット・新ひきこもりについて考える会
(左から2番目)
高校2年で不登校、20代半ばでひきこもりを経験。信頼できる精神科医や「ひきこもりについて考える会」での多様な人々との出会いを経て回復。仕事や結婚 を経験し、現在は同じくひきこもり経験者である夫と古書店を経営しながら、横浜・神奈川で仲間と不登校・ひきこもりの支援活動をしている。
林さんの提案と理由
仕事にも就いたが、稼がないと餓死してしまうのではないかという恐怖感と、病院代で給料が無くなってしまう虚しさで辛かった。今は自分の居場所と言える場所で好きな仕事をしているので、働いていることが苦ではない。
大きな思い切りが必要だったけれど、自分で仕事を作るというのもひとつの手である。
6人目 石崎 森人さん/「不登校新聞」子ども若者編集部
連載精神科通院歴13年。4年前まで2年半ほどひきこもる。脱した経緯や試行錯誤を不登校新聞にて「ひきこもるキモチ」として連載。現在はベンチャー企業で社内SE、マーケティングや新卒採用などを行っている。
石崎さんの提案と理由
ひきこもりや不登校となった場合、多くの人が病院に行く。
しかし、そこで医者から支援機関などを教えてくれるわけではない。
そして、当事者となった人は自分で支援機関を探す気力がなくなってしまっているため、適切な支援が受けられない。
そこで、病院に支援機関のポスターを貼り、自然と当事者の目に入る仕組みを作ることが有効ではないか。
7人目 川初 真吾さん/一般社団法人コヨーテ 代表理事
仙台出身。映像、出版、広告の世界を経て、ひきこもり当事者と共に新しい働き方やくらし方を想像する「一般社団法人COYOTE」設立、代表理事就任。 2012年ソーシャルビジネスグランプリ受賞。ひきこもりフューチャーセッション[庵-IORI-]ディレクター。ADHD診断済。ひきこもりの弟二人。 脳性まひの娘一人をもつ。
川初さんの提案と理由
狩猟民族は全身の感受性を高め、危険を察知するため神経を尖らせています。これはADHD(注意欠陥多動性障害)と同じ特徴ではないだろうか。そのような 感受性が高い人は社会のノイズを受け取ってしまいがちであるため、一般的な会社に送り込むことだけでは十分な支援とは言えない。
逆に、彼らの感受性を活かす場を作ることで、もっと優しい社会を作れるのではないか。
8人目 恩田 夏絵さん/ピースボート・グローバルスクール
小学2年生から不登校をはじめる。ひきこもり、リストカットなどを経て定時制高校卒業するも、“生きること”への希望を見いだせず、人生最期の旅のつもり で地球一周の船旅へ。様々なヒトと出会うことで“生きること”の多様性を実感。死ぬのをやめて現在の仕事に就職。
恩田さんの提案と理由
最初は自ら不登校を選んだ。しかし、学校へ行くこと、毎日会社に行くこと、人と仲良くすることなど、みんなが当たり前にできていることが出来ない自分には、この社会に居場所はないと思い絶望する。
しかし、人生最後に旅をしようと乗りこんだピースボートで、たくさんの人や価値観を知ることが出来たため、自分にも居場所があると思えた。
人と出会うことで、救われることがたくさんある。
不登校サポートナビの感想
8人の主張が終了した後は、イベントの参加者同士でのトークタイムや、参加者から登壇者への質問を受け付ける時間も用意されていました。
不登校やひきこもりという、普段はなかなかオープンに語れない話題について語り合える機会が得られたことも、悩みを抱える参加者にとっては、1つのきっかけとなったのではないでしょうか。
実際、参加者には、当事者の方やその家族、支援団体に所属している人などが多かったようで、参加者同士のコミュニケーションもあちこちで見ることが出来ました。
今回登壇された8人は、8人ともそれぞれのきっかけを得てひきこもりを卒業していました。
家族の支援があった人、いわゆる支援団体を利用した人、ひきこもりを受け入れ自ら仕事を作った人など、ひきこもるきっかけや理由が様々であるのと同じように、ひきこもりを卒業するきっかけも人ぞれぞれでいいのだと改めて気付かされました。
どんなことでも、1つの方法がダメだったからといって、全ての方法がダメとは限りませんよね。
大切なのは、自分や自分の家族にあった方法や学校がきっと見つかると信じて、本気で向き合い、そして試してみることなのかもしれません。
不登校サポートナビも、そんなチャレンジをサポートできるように、今後もさまざまな情報を伝えて行ければと思います。
【参考リンク:「ひきこもりUX会議」ブログ】
このコラムの著者
不登校サポートナビ 編集部
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