静岡県教委は、不登校で十分な義務教育を受けられずに卒業した人や、本国で義務教育を修了せずに来日した外国人らが通う夜間中学を設置する方針を固めた。3日、関係者への取材で分かった。2021年度から設置に向けた協議を始めるため、21年度の一般会計当初予算案に関連経費200万円を計上する。
夜間中学では通常の中学校と同じ科目で授業を行うが、生徒の実情に応じ、日本語学習に重点を置くなど、弾力的な教育課程の編成が認められる。静岡県教委は新たに協議会を設置して基本方針を策定し、設置校数や場所などを検討する予定。文部科学省は17年施行の教育機会確保法に基づき、全ての都道府県と政令市に夜間中学の設置を促している。
静岡県教委は昨年10~12月、静岡県内のニーズを把握するため、7カ国語でのウェブ調査を実施した。引きこもりの支援団体や国際交流協会を通じて呼び掛けたところ、計133人から入学を希望する回答が寄せられた。
静岡県教委義務教育課によると、入学希望者の出身国別の内訳は日本が20人だったのに対し、ブラジル50人、フィリピン21人、ペルー16人など、外国人が大半を占めた。居住地別では東部41人、中部32人、西部が56人と希望者が散在している実態も判明。年齢も10代から60歳以上まで幅広く、日本語の勉強や将来の就労、高校への進学などが希望の理由に挙がった。
<メモ>夜間中学 公立中学の夜間学級。戦後の混乱期に義務教育を十分受けられなかった人などを対象に、かつては全国で80校以上が設置されていたが、就学援助策の充実や社会情勢の変化に伴い設置数が減少した。近年は、不就学が問題となっている外国人や、不登校経験者の学び直しの場として注目が集まっている。2020年度の設置数は全国10都府県で34校。