宮崎県延岡市は2024年度から、不登校の中学生向けに柔軟なカリキュラムが組める「学びの多様化学校」を市内に設ける。不登校が増え続ける中、標準的な授業時間を削減してゆとりを持たせ、自分の興味に沿った学習を後押しする。来年1月に募集する。
12月26日の定例記者会見で、読谷山洋司市長と沢野幸司教育長が発表した。
校名は「延岡市立南浦中 学びの多様化学校分教室『熊野江教室』」。位置づけとしては同市北部の市立南浦中の分教室だが、事実上の「多様化学校」とする。
場所は、登校する子どもたちに配慮し、同校の隣の熊野江小の3階で、校舎は別。募集は中学校の各学年10人程度とし、市内に住民票があり、年間90日以上学校を休んでいるなどの条件がある。
開設する「学校」では、国語や数学といった従来の教科に加え、音楽と美術と技術・家庭を合わせた「芸術」▽道徳と学級活動を合わせた「セルフマネジメント」▽自分の興味・関心に基づいて問いを立て、解決を探る「プロジェクト学習」(いわゆる探究型学習)▽AIドリルを使って自分の分からない部分を振り返る「個別学習」の4科目を新設する。
通常の中学は1日6コマだが、午前と午後2コマずつの4コマとする。前後に10分ずつ「セルフマネジメント」「個別学習」の時間を取る。この結果、授業時間は年間1015時間が770時間になる。
バス通学を念頭に、授業は午前9時半から午後3時5分まで。給食はなく、弁当持参。制服もなく、私服で構わないという。
市教委によると、市の不登校児は増え続けており、22年度は中学生144人、小学生53人。市にはすでに学校復帰を目的とした「適応指導教室」と、登校の必要のない「オンライン学習」があるが、新たな選択肢ができることになる。
沢野教育長は「授業時間は減るが、新設科目を通じて学びの到達点は(通常の中学校と)変わらない」「不登校の子はオンラインと実際の登校と、両方求めていると感じる。多人数の中で学ぶのがつらくても、同じような経験をしてきた友人と、少人数で、学びたいものを学ぶ環境を届けたい」とした。
読谷山市長は「不登校で悩み、苦しんでいる家庭も多い。新たな選択肢として正月に家庭で話し合ってほしい」と語った。
市は1月13日午前10時から、同市本小路の市社会教育センターで学校説明会を開く。通学申し込みは同15~22日で、選考結果は29日に通知される。
文部科学省によると、今年4月現在、学びの多様化学校は全国の小中高に24校。九州では鹿児島県の私立高校に1校ある。大分県玖珠町でも新年度に町立の小中一貫校が開校する。(朝日新聞デジタル)