新型コロナウイルス禍は子供たちの学校生活にも影を落としている。不登校の小中学生が昨年度は約19万6千人に上り、過去最多を更新した。
近年増加傾向だが、休校や生活変化が影響し、数字を押し上げたとみられる。子供を見守り、支える指導と施策が一層必要なときである。
文部科学省は、病気などを除き年間30日以上の長期欠席をした児童生徒を不登校として集計した。令和2年度は、小学生6万3350人(前年度比18・7%増)、中学生13万2777人(同3・8%増)に上った。
不登校の要因は、いじめや思春期の悩みなどのほか、友人関係や家庭不和など、複数の問題がからみ対応が難しい。兆候をつかみ早期の対応が肝要だが、学校内外の機関で相談・指導を受けたケースは不登校児童生徒の65・7%(前年度70・4%)と低下した。
学校現場には「無理に学校復帰を促すと逆効果」との誤解が根強い。はれものに触るような態度で家庭訪問もせず、指導を放棄していないか。子供の孤立感が増すだけである。相談しやすい環境など、指導態勢を今一度、見直してもらいたい。
不登校ではないが、長期欠席理由に新型コロナへの「感染回避」を挙げた小中学生が約2万人、高校生を入れると約3万人に上った。感染防止対策を含め、学校への不信を抱かせない家庭との連携など十分な取り組みも重要だ。
コロナ禍の休校が明けても、遅れを取り戻すため行事などが削られる。給食も「黙食」となり、友達とのおしゃべりもできない―というのでは学校へ行きたくない気持ちにもなろう。
小中学生の全国学力テストと併せて行われたアンケートでは「学校が楽しい」と答えた割合の低下が目立った。コロナ禍のいま「楽しい」と感じ、夢の実現へ意欲が生まれる学校本来の魅力を取り戻す教員の指導力向上が必要だ。
オンライン授業の機会も増える中、その先を学びたいと思える授業の実践を忘れないでほしい。
調査ではパソコンやスマートフォンを通し誹謗(ひぼう)中傷する「ネットいじめ」の認知件数が約1万9千件に上った。この5年で倍増するなど、教室の中では見えにくい問題が増えている。ここでも子供の変化やSOSを見極める教員の指導力が欠かせない。(産経新聞)