「何万円もかけて(民間の)学習塾に通わせるのも難しい。ここで勉強する姿勢を身につけてほしい」
昨年12月下旬。岐阜市のNPO法人が運営する「ポポロ学習支援室」に中学1年の長男を通わせる母親は、こう話した。
40代のシングルマザー。長男は昨年、コロナ禍の休校のなかで小学校を卒業した。中学に入っても休校があり、環境の変化に慣れない様子だった。勉強についても、「まだ習っていないから課題ができない」とこぼすようになった。
そんな折、母親は病気で1週間ほど入院した。離れて過ごす間に、長男は深夜までオンラインゲームにのめり込むようになった。
「コロナの休校と進学、(自身の)入院も重なった。宿題をみてあげられず、一人親なのが子どもに影響したのでは」。母親は気をもむ。長男が昨夏から支援室に通い始めて「頑張ってね、と声をかけてもらえるのがありがたい」。
支援室を運営する「仕事工房ポポロ」では、週3回、昼間は不登校や引きこもりの若者らのフリースペースを開き、夜は小中高校生らを対象に無料で学習支援をしている。
高校1年の男子生徒は、勉強の合間に休憩室で漫画を読むのも楽しみにしている。「ここでは自分がやりたい勉強もできるし、息抜きもできる」
県によると、NPO法人や市民団体、社会福祉協議会などが開く学習支援の教室は、県内26市町に69カ所ある(昨年10月現在)。低所得や一人親の家庭を支え、発達障害のある子を受け入れる教室もある。
一方で、2018年に県内で実施された調査では、中学2年の子どもがいる世帯の67%が、無料の学習塾を「利用していないが利用したい」と答えた。一人親の世帯では77%にのぼる。調査では、所得が低い世帯で「大学まで進学することが困難」と考える子どもが多い傾向もうかがえた。
「学習支援教室をもっと増やせるように、支援を続けたい」と県の担当者。教室や子ども食堂などを立ち上げる団体に対しては、運営の経験者らをアドバイザーとして派遣している。
「生活を支えるために休みなく働き、子どもと向き合う余裕のない家庭もある。家庭だけでは解決できない問題があり、行政のトップは現場の声を大切にしてほしい」。ポポロの運営法人の理事長を務める中川健史さん(65)は、こう願っている。(高木文子)