学校に行きづらい子どもたちが参加する演劇サークル「ティーンエージャーズ フリー! シアター(TFT)」(神戸市垂水区)が15周年を迎えた。これまでに小学校高学年から高校生までの82人が舞台に立った。大切にしてきたのは「演劇を通して、自分を好きになる」こと。節目の公演を12月に予定する。
兵庫教育大(兵庫県加東市)の学生有志による研究プロジェクトとして2005年9月に始まった。中学校演劇部の顧問経験があるメンバーが、学校で孤立しがちな子どもが生き生きと活動する姿を見て、「演劇には力がある」と感じたことがきっかけだった。
練習を開始する時点で、台本はない。一人一人が「やりたいキャラクター」を発表することからスタートする。小説家、魔王、夢を操る女の子、海賊、花火師…。すべて実現させる。
即興劇をしてもらい、子どもが発したせりふを記録して台本に盛り込むのもTFTの特徴だ。
「上手な作品を作るのではなく、その子がやりたいこと、アイデアを全力で尊重する。自己肯定感を高める場になれば」というのがスタッフたちの願い。昨年は「シェアハウス」を舞台に、多彩な登場人物が登場した。
今はスタッフとしてTFTを支える神戸市の大学3年の女性(22)は小学校の時、いじめをきっかけに不登校になった。後に発達障害と診断されるが、「落ち着きがなかったり、学校で空気が読めなくてからかわれたり。でも、TFTではそっと受け止めてもらえ、安心できた」と話す。
小学6年から7年連続で舞台に立ち、魔法少女やネコの妖怪などを演じた。「練習の日が楽しみで、私の居場所だった。自分じゃない誰かになれるのも楽しかった」。今は大学で心理学を学びながら、活動を支える。
尼崎市の大学3年の女性(20)も中学時代、無視されるなどのいじめに悩み、登校しようとすると、頭や胃が痛くなった。TFTは高校2、3年の時に参加し、演劇を通じて「自分に自信が持てた」と振り返る。
今年はコロナ禍のため、例年より遅い8月8日から練習をスタートさせた。参加者は6人。12月13日には神戸アートビレッジセンター・KAVCホール(神戸市兵庫区)で15回目の公演を行う予定だ。
10年から保護者として関わり、現在は代表を務める井尻聡子さん(50)=神戸市垂水区=は「初めてTFTに参加した時、学校がしんどかった子どもが『ここは行ける気がする』と言った。これからも、子どもたちのやりたいことを引き出し、安心して活動できるサークルでありたい」と話している。
問い合わせはメール(kobe.tft@gmail.com)