新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、福岡市教育委員会が今月から順次始めているオンライン授業を巡り、不登校の子どもを持つ親から落胆の声が上がっている。受けられる対象がコロナを理由に登校できない子どもに限られ、それ以外は含まれていないためだ。市教委は「公教育の公平性」を理由に理解を求めるが、保護者からは「学校に行けない状況は同じなのに」と不満が漏れる。
福岡市は5月31日、オンライン授業の開始を発表。コロナが理由であれば、貸与するタブレット端末や家庭のパソコンなどで授業を受けられる。
高島宗一郎市長は「学校に通いにくかった人たちにも、新しい学習の選択の余地ができるのではないかと思う」と述べ、不登校の子どもを抱える一部の保護者は活用に期待を寄せていた。
市教委学校指導課は、対象を限定した理由について、現状では不登校の児童・生徒約1800人全員には端末を配備できないため、インターネットを使える環境がない家庭では授業を受けられず、貧富の差などで公教育の公平性を欠くと指摘。不登校の原因も一人一人異なるため、「十分に配慮した上で実施する必要がある」としている。
斉藤啓一課長は「全員分が準備できて初めて不登校児童への活用を考える段階」とし、将来的にはオンライン授業の活用を検討する考えを示した。一方、文書の表記については、「保護者が日々思い悩んでいるという事情を考えれば、言葉を選ぶ必要があった。真摯しんしに受け止めたい」と話した。(遠藤信葉)