不登校の小中学生が全国で約16万5千人と増え続けていることなどを受けて、文部科学省は、従来の学校復帰を前提とした支援のあり方の見直しに乗り出す。フリースクールなど学外の施設に通う不登校生を「出席」扱いにしやすくする通知を、25日付で全国の教育委員会に出した。復学のみを目標にしがちだった教育現場の意識改革につなげる狙いがある。
不登校生には、行政が支援する教育支援センターや民間のフリースクールなど学校外で学ぶ児童・生徒も多い。これまでも所属する学校長の判断でこうした子どもを出席扱いとする制度があった。ただ、文科省は過去に出席扱いする条件として「学校復帰が前提」と解釈できる通知を出しており、学校に戻る意思がないと適用されないこともあった。不登校の小中学生で「出席」扱いになったのは、約2万3千人(2018年度)にとどまる。
不登校で「欠席」が増えると、受験などで不利な扱いを受けることもあるほか、教育関係者から「登校圧力が子どものストレスになる」などと指摘があった。16年に成立した「教育機会確保法」では、学校外の多様な学びの場を支援する方針が盛り込まれ、「無理に登校する必要はない」という認識が広がりつつある。
こうした状況を受けて、文科省は、学校に通うことを義務教育の原則としつつも、学外で適切に学習している不登校生も評価できるよう従来の通知を見直すことにした。今後は、学校長が不登校生を出席扱いとするケースが増えるとみられる。同省幹部は「休養が必要な子どもには無理強いはせず、将来的に本人が復学を希望したときは円滑に戻れるような環境づくりをしてほしい」としている。
文科省の最新の調査では、18年度の不登校は、小学生が4万4841人(前年度比9809人増)、中学生が11万9687人(同1万688人増)といずれも過去最多を更新。不登校の6割近くが90日以上欠席しており、長期化する傾向もみられる。
NPO法人「ストップいじめ!ナビ」の須永祐慈・副代表理事(40)は「先生たちの意識は変わってきてはいるものの、今も学校復帰が善だと考え、まず復帰させようという指導になりがちだ」と指摘。「正式な通知として出す意味は大きい。周知の徹底をするとともに、休養や安心できる環境を充実させ、不登校の子の学習機会を拡充するための議論を進めるべきだ」と語った。(矢島大輔、山下知子)