感受性が強く人の気持ちに敏感な一方、ちょっとした刺激や環境の変化に苦しむ子どもの存在が注目されている。「HSC」と呼ばれ、海外の研究では5人に1人が当てはまるとされるが、国内の教育現場ではほとんど考慮されていない。周囲が無理解の場合、不登校につながる場合もある。
HSC(The Highly Sensitive Child=人一倍敏感な子ども)は、1990年代に米の心理学者が提唱。精神疾患や発達障害ではなく、その子が生まれつき持っている性質だ。
四つの判断基準があり、5人に1人が該当するという調査結果もある。周囲への気遣いなど社会生活を送るうえでプラス面の一方、味や触感など多くの人が気にならないことが苦痛のため、わがままと取られることが多い。理解がない場合、不安が強くなったり、不眠など体調不良が起きたりするケースもある。
精神科の看護師経験があるNPO法人千葉こども家庭支援センターの杉本景子理事長は、4年ほど前からHSCの相談に乗っている。公的機関での相談体制はまだ不十分で、最近では県外からの相談も多い。ようやく一部の教育関係者が研修に採り入れるようになったが、「学校現場ではほとんど考慮されていない」という。
同様の特性は、人間以外の動物でも見られ、草食動物の群れで最初に危険を察知して逃げる割合がやはり2割程度だという。杉本さんは「人間の世界でもHSCが最初に異変を感じることで、解決につながっていることがあるはず。短所だけでなく、長所も合わせて認識を深めてもらいたい」と話す。
HSCとみられる子どもがいる千葉市内の公務員女性(36)に、成育の特徴やこれまでの子育てについて聞いた。
「赤ちゃんの頃から手がかかり、『なぜだろう』とずっと悩んできた」。小学5年の長女(10)と2年の長男(8)は正式ではないが、専門家からHSCの可能性が高いと言われている。
母親が抱いていないと寝付かず、口にする離乳食は豆腐と納豆だけ。シーツや服は気に入った触り心地や柄のもの以外は受け入れなかった。不安になり健診で相談しても、「大丈夫だから」といわれるだけだった。ほかの子の母親たちからは「過保護ではないか」と言われ、育て方のせいかと苦しんだ。
幼稚園や小学校に進んでからは過剰に周囲に気を配るようになった。リレー競技では「他の子が悲しむ顔を見たくない」とみんなが来るまでゴールしない、ハンカチや消しゴムを常に余分に持って行き忘れた子が困らないようにする。寄り道など規則外の行動が苦手なため、集団登下校への参加は拒んだ。
「どうしてみんなのようにしないの」「もっと友だちの輪に入ったら」。周囲と違う行動を見るたびに声を掛けた。赤ちゃんの頃は泣いて拒否をした。大きくなると泣くことはなくなったが、過敏な感受性や感覚は変わらなかった。
最近になって偶然HSCについて知り、子どもたちの典型的な行動と重なることに気がついた。「ずっと抱えていたプレッシャーから解放された。知らなかったとはいえ、子どもには負荷をかけてしまった」
いまは長所である、人の気持ちが分かる、思慮深いといった特性を伸ばしていくようにしていきたいと思っている。
「HSCについて理解が広まれば、良い特性にも目が向くと思う。そのためにも相談体制を充実させてほしい」
千葉こども家庭支援センター(千葉市中央区新宿1丁目)はHSCの個別相談を行っている。
1回1時間8千円(税別)。
問い合わせはセンターのホームページ(https://pegasasuwing.com/contact/)から。