高校教育の共通性と多様性への対応を検討する中教審の「高等学校教育の在り方ワーキンググループ」の第3回会合が12月12日、オンラインを交えて開かれた。この日は定時制・通信制の望ましい在り方について、2校の校長からヒアリング。不登校や発達障害といった特別な配慮が必要な生徒に対しての柔軟な取り組み内容が発表された一方、財政面や教員負担といった課題が改めて浮き彫りになった。
定時制および通信制については、これまでの中教審の議論の中で、不登校経験や特別な支援を必要とする生徒が多く在席しており、勤労青年向けという制度の前提が変化しているとして、改めてその在り方を考えることが必要とされている。
この日は高知県の太平洋学園高校と、東京都立世田谷泉高校の2校の校長が会議に参加し、その取り組み内容や現状における課題を説明した。
狭域通信制高校の太平洋学園高校は発達障害と診断された生徒の割合が定時制で約4割、通信制で約3割在席しているという。通信制の週1日から始め、最終的には定時制に校内転籍して、毎日登校することも可能なステップアップ型の登校計画や、体育など生徒の事情で履修できない授業を通信科目で置き換えられるといった、生徒一人一人の特性に対応するための取り組みを説明。また、生徒が相談したい教員を担任以外から選べるスクールアドバイザー制度を導入し、担任が1人で抱え込まない体制づくりも行っている。
一方で、財政面が課題となっており、光富祥校長は「とても厳しい。教育相談に関する研修といった勉強代は出すようにしているが、給料は公立の高校の先生方とは比べ物にならないくらい。臨床心理士などの資格取得も教員の意思の下、自己負担でやってもらっている状況」と述べた。
小中学生での不登校経験や高校での中途退学経験のある生徒が自分の目標を見つけ、挑戦するために、学習や学校生活への意欲を重視した入学選抜を行う「チャレンジスクール」として創立された東京都立世田谷泉高校は、入学生の7~8割が不登校経験者。高校でも3~4割が不安定な登校、もしくは不登校状態になっているという。沖山栄一校長は進路が未決定になるだけでなく、転退学後の状態把握が困難になるため、「登校できなくても学べる仕組みが定時制でも必要」と強調した。
また、「高校は義務教育ではなく自己責任」「登校できない人のために通信制がある」「特別な対応が不登校を助長する」といった不登校理解が取り組みをする上で、課題になると指摘。
その上で、「これからの不登校理解は登校のみを目標にするのではなく、社会的自立に向けた学習支援が必要」と述べ、定通の併修を年度途中から利用できる制度や、単位認定に対し単に出席だけでなく、何を修得したかを重視する評価方法などの方向性が示されることを期待した。さらに教員への負担から、教室で行っている授業を自宅にいる生徒に同時配信することがなかなかできないとし、効果的に支援するための専任スタッフの配置の検討も求めた。
今村久美委員(認定 NPO法人カタリバ代表理事)は沖山校長の説明を受け、「高校生は社会に出る一歩前、自立直前の重要な時期。自立がなかなかできていない子どもたちにとっては、ものすごく厳しい大海原に突然出るということにもなってしまう。特に通信制で学んだ生徒がどのようになっているのかを深く理解をしたい」と述べ、文科省に不登校に関する追跡調査の必要性を訴えた。
青木栄一委員(東北大学大学院教育学研究科教授)は「部活動の負担など、ヒューマンリソース(人材資源)の配分が全日制の高校と違う部分がある」と指摘。定時制や通信制の高校の教職員がどんな業務にどれだけ時間を使っているのかが分かることで、私立や公立といった設置形態に縛られない議論ができるとした。
(教育新聞)