新型コロナウイルス感染防止のための学校休校が続いている。かつて不登校を経験した支援者には、不登校児の親から、全員登校できない状態になったことで、普段の不安感から一時的ながらも解放されているという複雑な気持ちが寄せられている。一方で学校再開後への不安もあり、支援者は世間に「今だからこそ、学校に行けない心情を考えてほしい」と呼び掛ける。
岐阜市出身の木野村聡さん(28)=名古屋市=は、中学時代に引きこもりを経験。現在、名古屋市内のコミュニティカフェの代表を務め、愛知県岡崎市を拠点に活動する不登校支援団体のメンバーでもある。さらに岐阜市内のフリースクール「共育オアシスあいぎふ自由学校」で開く子ども食堂の支援を行い、不登校の子を持つ親の悩みや葛藤に寄り添う。
全国一斉の休校後、木野村さんのもとには、不登校児の親から「すべての子が自宅で過ごすことが日常になり、不安が和らいだ」「登校させなきゃと思い詰め、責任を感じる日々だったが、子どもの存在を認めるゆとりができた」など前向きな言葉が届くようになった。3月には、不登校の気持ちを考える保護者向けの講演会をオンライン動画で配信した。
保護者の反応から「焦りや孤独感から、一時期でも解放された親は多い」と実感する一方、コロナ終息後の学校再開の在り方によっては、極端に不登校児が増える可能性があると指摘する。「休校中、子どもなりにゲームや得意なことをしてストレスを発散している。再開で、授業時間の確保が最優先されると、環境の変化に対応できず登校を渋る子が多く出るのでは」と危惧する。
木野村さんと講演会を企画した名古屋市在住の漫画家、棚園正一(しょういち)さん(37)も、自身の不登校経験を幅広い年代に伝えようと活動する。休校を受け、3月中旬に短編作品「学校へ行けない僕とコロナウイルス」を制作。作品はツイッターなどに掲載したほか、アニメーション動画に加工して動画投稿サイト「ユーチューブ」に公開した。作中で、皆が登校できない状況に安心する不登校児の心理を代弁している。
コロナの影響で、オンライン授業など在宅学習の仕組みが急速に整備されている点にも注目した。漫画の中で、自宅でもインターネットや本を利用して勉強ができることを紹介した棚園さんは「長期の休校が、不登校そのものの捉え方や学校の役割を再考する転換点となれば」と訴える。木野村さんは「在宅学習の教材やオンラインによる個人指導が浸透した。不登校の子どもたちへの手厚いサポートとして活用されてほしい」と期待を込める。(岐阜新聞)